さんきゅー俳句

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散文

我以外の家族見送る旅始

朝の冷たい空気の中、家族を見送る。玄関の扉が開き、次々と外へ出ていく背中を見送りながら、私はただ静かにその光景を眺めていた。足音が遠ざかるたびに、家の中の空気が少しずつ変わっていく。つい先ほどまで聞こえていた何気ない会話も、今はもうない。た...
散文

初夢の扉に取手無かりけり

夢の中に現れた扉は、確かにそこにあった。けれど、その扉には取手がなかった。木目の美しい滑らかな表面、僅かに光を反射する静かな佇まい。しかし、それを押し開く術はどこにも見当たらなかった。私はただ、扉の前に立ち尽くし、その先に広がるはずの世界を...
散文

見えるもの鏡に映り去年今年

鏡の中に映るものは、ただの像ではない。それは昨日の私と今日の私、過ぎ去った時間とこれからの時間、その狭間に揺れる曖昧な存在のかたち。何も変わらぬように見えて、ほんのわずかに異なる表情がそこにある。光の加減か、心の影か、その違いを見極める術は...
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散文

窓今日も光を通し年新た

朝の光が静かに部屋の中へと滑り込んでくる。柔らかなカーテンを透かし、壁や床に淡い影を落としながら、新しい年の気配を運んでいる。昨日と変わらぬ窓辺に立ち、ふと指先で硝子をなぞると、ひんやりとした感触が肌に沁みた。冬の冷たさとともに、清冽な空気...
散文

クリスマス幸せに裏切られ続け

クリスマスが近づくと、街は光に包まれ、赤や緑の華やかな色彩で埋め尽くされる。商店のショーウィンドウには微笑むサンタクロース、恋人たちの手を繋ぐ姿があふれ、どこを見ても「幸せ」を謳う光景ばかりだ。けれども、その光景がまるで違う世界の出来事のよ...
散文

楽器屋の扉の軽きクリスマス

冬の冷たい風が街角を抜け、どこからかクリスマスソングが微かに流れてくる。楽器屋の扉は、古びた木製のもので、小さなベルが取り付けられている。誰かがその扉を開けるたび、ベルが軽やかに音を立てる。その音色は、どこか控えめでありながらも、クリスマス...
散文

雑踏や白きジャンパー白き犬

雑踏の中に、白いジャンパーを着た人が立ち止まる。その白は、冬の曇天の下でひときわ目立ち、周囲の騒がしさの中に静けさを漂わせている。足元には一匹の白い犬がいる。その毛並みは柔らかく、冷たい風に揺れるたびに、光を吸い込むように淡く輝く。その二つ...
散文

大鮪できないならしょうがないよ

市場の朝、冷たい風が吹き抜ける中、大きな鮪が氷の上に横たわっている。その存在感は圧倒的で、艶やかな青黒い皮が冬の光を反射し、堂々とした姿を見せている。近づく者たちの視線には期待と緊張が混じり、一本の鮪が持つ価値を誰もが知っている。けれども、...
散文

年惜しむそれは一口ではないよ

年の瀬が近づくと、時間の流れが少し重たく感じられる。何気ない日々の中で過ぎていった時間を振り返り、そのすべてが惜しく思える。年を惜しむという感覚は、一つの瞬間に収まりきるものではなく、むしろ積み重なった無数の出来事や、交わした言葉の欠片から...
散文

誤植また見つける人や冬の虹

冬の寒さに包まれた静かな書斎。机に広げられたページの中で、ひっそりと隠れていた誤植を見つけた瞬間、時間が止まるような感覚が訪れる。まるで曇り空の中から突如として現れる冬の虹のように、その小さなミスが突然目に飛び込んでくるのだ。ごく僅かな違和...
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