さんきゅー俳句

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散文

剪定せし通行人を気にしつつ

剪定ばさみの音が、春の空気に短く響く。枯れた枝を落としながら、ふと背後に通り過ぎる足音に耳を澄ませる。剪定する手は止まらないが、そのわずかな音の変化が、思いのほか心をざわつかせる。季節の境目にある庭は、まだ寒さを引きずり、空気のなかに乾いた...
散文

石垣に石の大きさ春浅し

石垣の前に立つと、冬の冷たさがまだ石の奥に残っているのがわかる。掌をそっとあてれば、硬さよりも、そこに閉じ込められた時間の重みが伝わってくる。無数の石が積み重ねられ、ひとつとして同じ形のものはない。それぞれが選ばれ、嵌め込まれ、互いの隙間に...
散文

遠慮して流るる音に春の川

川面を撫でる風は、どこかためらいがちに吹いていた。冬の名残を胸に抱えたまま、春の気配に戸惑うようなその息吹は、水のさざめきにも淡い翳りを落とす。岸辺に立てば、足元の土はまだ冷たく、けれど遠くの草むらには、確かに芽吹きの光が溶け始めている。静...
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散文

三寒四温赤子の痣の痛々し

冬の名残を引きずる風が吹き、また少しずつ春の気配が忍び寄る。三寒四温——寒さと暖かさが交互に訪れながら、季節は静かに移ろっていく。その緩やかな変化のなか、赤子の頬に滲む痣の色が、ふと目に焼きついた。生まれたときからそこにあるもの。親の指がそ...
散文

コンビニで買う寒卵割れるなよ

夜のコンビニの冷たい照明の下、卵のパックをそっと手に取る。指先に伝わるのは、ひんやりとした感触。寒卵——冬の冷え込みのなかで育まれ、白身が締まり、黄身が濃厚になったもの。それを、慎重にレジへ運ぶ。「割れるなよ」と、心の中で呟く。買い物袋に入...
散文

雪よ降る場所を探して降りにけり

空を見上げると、静かに雪が舞っている。風に流されながら、ふわり、ふわりと揺れ、どこへ落ちるべきかを探しているかのようだ。屋根の上、道端の隅、木の枝の先、人の肩。どこに降るかは風次第、けれど、どの一片も迷いながらも必ずどこかに落ちていく。雪は...
散文

難しきあけましておめでとうという言葉

「あけましておめでとうございます。」新しい年の始まりに、何気なく口にするその言葉が、時に重く、時に難しく感じられることがある。心からの祝福として交わすこともあれば、ただ儀礼としてつぶやくこともある。相手によっては、言うべきか迷うことさえある...
散文

カレー食べたし仕事始の十一時

仕事始めの朝。久しぶりのデスク、久しぶりのキーボードの感触。年末年始の喧騒が過ぎ、日常がゆっくりと戻ってくる。けれど、頭も体もまだ本調子ではなく、時間だけが淡々と進んでいく。ふと時計を見ると、十一時。昼には少し早いが、腹の底からじんわりと湧...
散文

プリキュアのスライドパズル去年今年

子どもの部屋の片隅に、プリキュアのスライドパズルが置かれている。カラフルなピースが少しずつずれて、キャラクターの顔が歪んでいる。去年、夢中で遊んでいたあの小さな指先は、今年もまだこのパズルを動かしているのだろうか。去年の冬、何度も何度もこの...
散文

初春や赤いファーストシューズ買う

店先に並ぶ小さな靴の数々。その中で、ひときわ目を引いたのは赤いファーストシューズだった。まだ誰の足にも馴染んでいないその靴は、春の訪れを待つように、柔らかな光を受けて佇んでいる。初めて履く靴。初めて歩く道。その小さな一歩が、これからどれほど...
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