「あけましておめでとうございます。」
新しい年の始まりに、何気なく口にするその言葉が、時に重く、時に難しく感じられることがある。
心からの祝福として交わすこともあれば、ただ儀礼としてつぶやくこともある。相手によっては、言うべきか迷うことさえある。去年、何か大きな喪失を経験した人に、あるいは、まだ去年の疲れを引きずっている自分自身に――「おめでとう」と言い切ることが、本当に正しいのかと、ふと考えてしまう。
けれど、この言葉の本質は、単なる祝福ではないのかもしれない。すべてが順調でなくても、心が晴れやかでなくても、それでも「新しい年を迎えた」という事実だけは確かにそこにある。そのことを確認し、静かに区切りをつけるための言葉なのではないか。
だからこそ、「あけましておめでとうございます」は時に難しく、けれど、それでもなお、言葉にする価値のあるものなのだろう。迷いながらも、私はまたこの言葉を誰かに向けて言う。そして、その言葉を受け取るたびに、少しずつ新しい年に馴染んでいくのだ。
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