冬の名残を引きずる風が吹き、また少しずつ春の気配が忍び寄る。三寒四温——寒さと暖かさが交互に訪れながら、季節は静かに移ろっていく。その緩やかな変化のなか、赤子の頬に滲む痣の色が、ふと目に焼きついた。
生まれたときからそこにあるもの。親の指がそっと触れ、確かめるようになぞるたびに、その痛々しさが胸を締めつける。医者は「いずれ消えるもの」と言ったが、今この瞬間にあるその痣の存在は、紛れもなく確かなものだった。赤子は何も知らず、ただ眠り、泣き、笑う。その無垢さが、なおさらその痣を際立たせるように思えた。
寒さがぶり返す日もあれば、春の陽射しがやわらかく差し込む日もある。赤子の痣もまた、日によって濃く見えたり、薄く感じられたりする。親の心もまた、冬と春の間を揺れ動く。気にしすぎるのはよくない、けれど、忘れることもできない。その間で、ただ小さな手を握りしめることしかできない。
やがて春が本格的に訪れる頃、この痣も少しずつ薄れていくのだろうか。それとも、親のまなざしが、それを気にしなくなる日が来るのだろうか。三寒四温のなか、移ろいゆく季節のように、赤子の肌も、親の心も、やがて変わっていくことを信じながら、私はそっと揺り籠を覗き込んだ。
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