踏みしめるたびに、霜柱が細かな音を立てる。凍った土が割れ、無数の小さな氷の柱が砕けていく。その感触は儚く、しかし確かに足元に存在していたものが、音もなく消えていく様に、ふと胸が締めつけられる。
愛とは、形のあるものなのか。それとも、触れた瞬間に溶けていくものなのか。霜柱の儚さは、まるで誰かを想う心のようだ。そこに確かにあるのに、強く触れれば壊れてしまう。けれど、だからこそ、その一瞬の輝きが美しい。
「愛即是空、空即是愛」――すべてのものは移ろい、実体を持たぬ。だが、だからこそ、そこに無限の可能性がある。霜柱は陽に当たればすぐに消えるが、やがてまた冷え込めば、新たな氷の柱が地中から生まれる。消えてもなお、そこには確かに流れ続けるものがあるのだ。
霜柱を踏みしめた足跡が、ゆっくりと朝日に溶けていく。その消えゆく光景のなかに、愛もまた、形に囚われず、ただ感じるものであることを思う。
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