役所まで段差無き道秋高し

散文
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役所まで続く道は、平らで段差一つない。秋の高い空が、澄み切った青さを広げている。遠くまで見渡せるその道は、まるで空に吸い込まれていくかのように真っ直ぐで、歩いていると足元の確かさが心地よい。段差のないこの道は、誰もが無理なく進めるようにと丁寧に整えられており、秋の静けさに包まれながら、役所という目的地へと穏やかに誘われる。

秋高し――その言葉がふさわしいこの季節の空気は、どこか軽やかで、しかし冷たさを感じさせる。夏の重い暑さが去り、乾いた風が頬をかすめる。そんな空気の中で歩くと、目的地に向かう足取りは自然と軽くなるようだ。役所への道という日常の一コマさえ、秋の光の中では、特別な安らぎを感じさせる。

空は高く、雲は少しだけたなびき、その影は足元の道に静かに落ちる。段差のない道を歩くことで、景色や空の広がりを存分に感じられる。人々が行き交うその道には、どこかしらのんびりとした秋の気配が漂い、誰もが一息つきながら、穏やかな時間を過ごしているように見える。役所までの距離さえ、ささやかな旅路のように思えてくる。

道の途中で、ふと立ち止まって空を見上げると、その高さに改めて心を奪われる。段差のない道がどこまでも続くように、この秋空もまた無限に広がっているように感じられる。役所へ向かうという単調な行為でさえ、この美しい季節の中では、豊かで意味のある時間へと変わっていく。秋は、その澄んだ空と冷たさで、何気ない瞬間にも深みを与えてくれる。

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