窓今日も光を通し年新た

散文
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朝の光が静かに部屋の中へと滑り込んでくる。柔らかなカーテンを透かし、壁や床に淡い影を落としながら、新しい年の気配を運んでいる。昨日と変わらぬ窓辺に立ち、ふと指先で硝子をなぞると、ひんやりとした感触が肌に沁みた。冬の冷たさとともに、清冽な空気が胸を満たし、過ぎ去った日々の残響が微かに耳の奥で揺れる。

窓の向こうでは、陽の光に照らされた街がゆっくりと目を覚ましていく。屋根の上に残る白い霜が輝き、通りを行く人々の足取りにも、どこか新たな節目を感じさせる慎ましさがある。日常は変わらず続いているはずなのに、その一瞬一瞬が新しく、清らかに見えるのは、この日だけが持つ特別な魔法なのかもしれない。

ふと、去年のこの日を思い出す。同じ窓から、同じ光を見つめながら、何を願い、何を思ったのか。時間は静かに積み重なり、知らぬ間に過去となる。それでも、こうしてまた光を迎えることができるのは、ささやかな祝福なのだろう。新しい年の訪れは、未来がまだ白紙であることを示している。その白さを恐れることなく、一歩ずつ書き込んでいけるようにと、心の中でそっと祈る。

光は変わらず窓を通り、今日という日を照らしている。手を伸ばせば、触れられそうなほど近くにあるその輝きに、新しい年の静かな約束を感じながら、私はそっとカーテンを開いた。

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