冬の空気はひんやりと冷たく、遠くの景色が霞んで見える。けれど、その冷たさを忘れさせるように、ひときわ鮮やかな虹が空にかかっている。冬の虹は、まるで一瞬の夢のように空に現れては消える。冷徹な風景に突如として浮かぶ色の帯に、心が引き寄せられるのだろう。それは、寒さの中で感じる温かさ、心の隙間にそっと差し込む希望の光のように、瞬間的に美しい。
その美しい景色を背にして、遊技場の隅にあるクレーンゲームの前に立つと、どこか遠くの世界に引き寄せられるような気分になる。数々のぬいぐるみが並べられたガラスケースの中、光を反射してその目がきらりと輝いている。どれもこれも手が届きそうで届かない。指先でレバーを動かし、アームが機械的に動き出す瞬間、まるで虹を追いかけるような気持ちが湧き上がる。
そして、その一瞬。アームがぬいぐるみをしっかりと掴んだ時、その重さが手元に伝わる感覚が心地よい。まるで冬の虹が手のひらに落ちてきたかのような、思わず息を呑む瞬間が訪れる。ついさっきまでは夢のように遠くにあったものが、たった一回のチャンスで自分の手の中に収まる。虹のように、掴んだぬいぐるみもまた、ひとときの輝きとともに心を満たしていく。
その瞬間に感じるのは、ただの勝利の喜びだけではない。それは、無意識のうちに心の奥底で待っていた希望が現実となり、形を持った瞬間の感動。冬の空に架かる虹のように、儚く、そして美しい。どこか儚さを感じさせるものの中に、確かなものが手に入ったという安心感がある。その安心感が、また一層、世界の美しさを感じさせてくれる。
クレーンゲームでぬいぐるみを手にしたその後も、冬の虹のような瞬間が心の中で鮮やかに輝き続けるだろう。短い一瞬でも、心の中で永遠にその色を保ち続けるように。そしてその一瞬が、これから訪れる寒い季節の中で、心を温める灯火となることを願ってやまない。
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