交換する金貨銀貨や鷹渡る

散文
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秋の市場で、交換の手が行き交うたび、金貨と銀貨が硬い音を立てて重なり合う。その一瞬の光の揺らめきが、黄金色に染まる遠い空へと反射して消えていく。人々が手にするそれぞれの硬貨には、異なる歴史や意味が刻まれており、互いの手の中で価値が交わり、新たな物語が紡がれていく。温かな手から冷たい手へ、また、誰かの期待から別の誰かの夢へと移るその瞬間、秋の空には見えない風が流れ込む。

ふと顔を上げると、はるか空高く一羽の鷹が悠然と翼を広げ、秋の大気の中を静かに滑空している。すべての交換や取引から隔たれた場所で、何物にも縛られることなく、ただ風に乗り、視界の全てを独り占めするかのように飛ぶ姿。その影がかすかに地上に落ち、金貨と銀貨が交わる場面を見下ろしているかのようだ。

人々が生きる日常の重みを帯びた硬貨と、空を渡る鷹の軽やかさ。どちらも秋の風景に欠かせぬ存在だが、その佇まいはまったく異なる。金貨や銀貨が手の中に握られ、指の温もりで一時的にその冷たさを失う間に、鷹はどこまでも冷ややかで高潔な空気の中に身を沈めている。交換される硬貨に込められた想いが地に留まるほど、鷹の姿はそれから遠ざかり、地上の営みをはるかに超えた静寂を湛えているようだ。

やがて、取引が終わり、それぞれの人々が足早に去る頃、鷹の姿も秋の空に溶け込むように消えていく。金貨と銀貨が人の手を渡り、名も知らぬ場所へと向かうその旅路の遥か上で、秋の風をまとった鷹がただ一羽、静かに渡り続ける。

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