総裁になりたしなりたし檸檬の香

散文
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檸檬の香りがふっと鼻をかすめると、総裁という大きな肩書きを望む気持ちが胸の奥から静かに湧き上がってくる。その肩書きは、まるで手の届かない光のように輝き、魅力的でありながらもどこかはかない。檸檬の香りは、その願いの甘酸っぱさを象徴しているかのようだ――新鮮で鋭く、しかし儚い。

総裁という名を手に入れれば、すべてが変わるだろうか。自分の考えや理想を実現し、影響力を持ち、多くの人々を動かす力を得る。だが、その地位を得たとき、檸檬のように爽やかな香りだけが残るのだろうか、それともその酸味が自分の舌を苦くするのか。心の奥で思い描くその未来には、期待と同時に、何かしらの危うさが潜んでいる。

檸檬の香りが立ち昇るたびに、成功の甘美な予感と、それを手に入れるための代償が入り混じる。総裁になりたし、なりたし――その言葉は口に出さなくても、心の中で何度も繰り返される。それは単なる野望ではなく、どこか清々しくもあり、また一抹の寂しさを伴う感情だ。檸檬の酸味と同じく、その願いは一瞬の輝きを持ちながら、決して長く続くものではないのかもしれない。

総裁という響きは、檸檬のように鮮烈で心を揺さぶるが、その道のりは決して甘くはない。心の中で、なりたし、なりたしという渇望が高まるほど、その重みを感じる。そして、どこかで理解しているのだ。檸檬の香りが風とともに消えるように、その欲望もまた、いつかは薄れていくのだと。

だが、今この瞬間は、檸檬の香りとともに、総裁という名の持つ力を夢見ていたい。それがどんな結末を迎えようとも、香り立つ願いの中に一瞬の喜びがあるのだから。

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