初景色始点終点見えぬ川

散文
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新しい年の朝、遠くまで続く川を眺める。水面には冬の陽が淡く反射し、静かに流れていく。その川の始まりはどこなのか、終わりはどこなのか、見渡しても分からない。ただ、今この瞬間も、絶え間なく水は流れ続けている。

人生もまた、この川のようなものなのだろうか。始点を意識することなく歩みを進め、気づけばずっと先へと運ばれている。振り返れば過ぎ去った時間があるが、どこからが本当の始まりだったのかは定かでない。そして、その先がどこへ向かうのかも分からぬまま、私たちは流れに身を任せるしかない。

川のほとりに立ち、じっと水の流れを見つめる。去年もこうして同じ景色を眺めていたのかもしれない。しかし、その時と今では、同じ川でありながら流れる水は異なっている。日々が過ぎ去るように、川の水も決して留まることはない。新しい年を迎えても、何も変わらぬように見える景色の中に、確かに変化は流れ続けているのだ。

始まりも終わりも見えぬこの川のように、私たちは時の流れのなかにある。けれど、それを不確かだと恐れるのではなく、ただ穏やかに見つめることで、今という瞬間の確かさだけは掴めるのかもしれない。私はもう一度、流れる水の音に耳を澄ませ、静かに息を吐いた。

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