夕暮れが迫る九月の空の下、父の手を握った瞬間、微かに震えるその感触が指先に伝わる。手のひらに残るかすかな温もりは、時間の経過とともに薄れ、やがて遠ざかる存在を予感させる。その日は奇妙なほど静かで、風も木々のざわめきも何かを押し殺すかのように息を潜めていた。しかし、遠くの景色には、毒のような色をまとった夕陽がにじみ、沈黙の中で静かに燃えている。
その色は、言葉にならない思い出の重さを映しているようだった。父の手はかつて、日々の労働や家族への思いやりを象徴するものだったが、今ではその力が弱まり、終わりの訪れを感じさせる。だが、その手を握ることで、まだそこにある確かな命の痕跡が心の中に残る。九月の冷たさと色彩は、何かが変わりゆく瞬間を強く意識させる。
目を閉じると、父との過去の記憶が波のように押し寄せる。それらの瞬間は、過去の鮮やかさから今やくすんだものへと変わり、記憶の中で次第にぼやけていく。秋の風に乗って運ばれる冷たい空気が、胸の奥に刺さり、別れの予感が重くのしかかる。
やがて、夜が静かに訪れる。空には青みを帯びた毒の色が残り、その不安定な美しさに心を掴まれる。父の手を離したとき、わずかに残るその感触が、確かに過ぎ去った時間を証明する。
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