ステーキ皿

エッセイ
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昼過ぎ、インターホンが鳴った。
モニター越しに見る配達員は、すでに「重いですよ」という顔をしている。ドアを開けると、段ボールが2つ。どちらもそれなりに主張が強く、玄関のたたきが一気に狭くなる。

中身は生活そのものだった。
赤ちゃんの食事用マット、衣類用洗剤の詰め替え、トイレットペーパー、おむつ用のビニール袋、離乳食。そして、なぜかその流れの中に混じっているステーキ皿。

床に座って段ボールを開けていくと、ビニールと紙の擦れる音がして、部屋に一瞬だけ新品の匂いが広がる。
赤ちゃん用品は軽くて柔らかい。角がなく、色もやさしい。生活を守る側の物たちだ。
一方で、ステーキ皿は重い。黒くて、冷たくて、明らかに異物感がある。

そう、私はステーキが好きなのだ。

外で食べるステーキは高い。
しかも最近は、レアという名のほぼ生肉が出てくることが多い。あれはあれで良いのかもしれないが、私は自分で火加減を決めたい。
だったら家で焼こう、どうせならちゃんと美味しく食べよう、という流れでステーキ皿を買った。

ステーキ用に揃えたのは、鉄の皿と、よく切れるナイフとフォーク。
特にナイフは重要で、肉がすっと切れるだけで、ステーキの満足度は一段階上がる。切れないナイフでギコギコやると、それだけでテンションが下がる。

ただ、結果として見ると——
ステーキ皿は、別になくてもよかった。

鉄板でジュウジュウ言わせながら食べるのは、確かに気分がいい。
だが、家でそこまで演出する必要はなかった。

ステーキ皿は鋳物だったので、使った後に錆びないように油を塗っておく必要があったり管理が手間だった。

熱い、重い、洗うのが面倒。使うたびに、少しだけ覚悟がいる。

今のところの私のベストステーキプラクティスはこうだ。
低温調理をして、フライパンでさっと焼く。
焼けたらすぐ、まな板の上に置く。
そこで切って、そのまま食べる。

まな板は広い。
肉を切るのに余裕がある。
何より、実用的だ。

ステーキ皿を買ったこと自体は、失敗というほどではない。
「まあ、悪くはない」
そのくらいの評価に落ち着いている。

生活必需品と、ちょっとした欲。
その両方が、その日は同じ箱に入って届いた。

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