冬の日差しが柔らかく差し込む部屋の中、机の上に広げられた塗り絵が風に揺れる。ポインセチアの鮮やかな葉が描かれたその一枚に、色鉛筆の跡が細かく重ねられている。深紅と緑がほぼ塗り尽くされた中に、小さな塗り残しがいくつか見える。それは、ほんのわずかな空白でしかないが、妙に目に留まり、物語の余白のように感じられる。
塗り絵に向き合う時間は、静かで集中したひとときだ。無心に手を動かしながら、心のどこかでは別のことを考えている。その塗り残しが意図的なのか、ただの見落としなのか、自分でもよく分からない。ただ、そこにわずかな「未完成」があることが、なぜか落ち着きをもたらす。完璧さではなく、途上であることの美しさが宿るのかもしれない。
ポインセチアの赤は、冬の寒さを忘れさせるような暖かさを放っている。その花びらの色を塗り込むたびに、冷えた指先にもぬくもりが戻るような気がする。塗り残した部分はやがて気づかれるかもしれないし、そのまま忘れ去られるかもしれない。それでも、その小さな空白は、ポインセチア全体の美しさを損なうどころか、むしろ引き立てている。
冬の午後、窓の外の景色は薄曇り。塗り絵を置き、静かに息をつく。塗り残しのあるその絵が、なんともいえない穏やかな感覚を与えてくれる。それは未完成であるがゆえに開かれている、未来の余地のようだ。ポインセチアの塗り絵が、小さな冬の光とともに、心にささやかな温もりを残している。
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