強めに起こされる

エッセイ
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夜0時半に起きる。
いや、起こされた、が正確だ。しかも、けっこう強めに。

生後1ヶ月ちょっとの赤ちゃんがいる頃の夜は、夜ではない。
時間の感覚が溶けていて、時計の数字だけがやけにくっきりしている。赤ちゃんは3〜4時間おきにお腹が空く。こちらがいちばん深く眠っている時間帯を、きっちり狙って泣く。暗い部屋に、小さくて、しかし妥協のない声が響く。

その頃は、夜の担当を決めていた。
夜0時から朝6時までは私。赤ちゃんが起きたら、ミルクを作り、おむつを替える。どちらがやるかで揉めるのが一番よくない、という判断だ。泣き声の中で「どっちやる?」なんてやり取りをすると、やらない方も、やる方も、どちらも機嫌が悪くなる。だったら最初から当番制にしよう、ということになった。

代わりに、私は夜9時から0時まで仮眠をとる。
朝6時まで担当を終えたら、また9時まで寝る。3時間ずつ、合計6時間。数字だけ見れば、まあまあ普通の睡眠時間だ。でも、睡眠を細切れにするというのは、思った以上に体にくる。夢を見かけたところで、必ず引き戻される。

その夜も、妻に起こされた。
しかも、強めに。肩を揺すられ、声もやや大きい。
「時間だよ」というより、「さあ起きろ」という感じだ。

これが、地味に嫌だ。
普通に起こしてくれればいいのに、と思う。夜やるとは言ったけれど、3時間寝ただけで、すっと起きられる体ではない。頭は重いし、目の奥が痛い。布団の中はまだ温かく、外は暗い。

とはいえ、文句は言わない。
赤ちゃんはもう泣いている。ミルクの缶は台所に置いてある。電気をつけると、シンクのステンレスが白く光る。計量スプーンがカチャンと鳴る音が、夜中にはやけに大きく聞こえる。

そうやって、私は起きる。
強めに起こされ、まだ夢の続きみたいな頭で、当番を引き継ぐ。あの頃の夜は、いつもそんな始まり方だった。

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