雑踏の中に、白いジャンパーを着た人が立ち止まる。その白は、冬の曇天の下でひときわ目立ち、周囲の騒がしさの中に静けさを漂わせている。足元には一匹の白い犬がいる。その毛並みは柔らかく、冷たい風に揺れるたびに、光を吸い込むように淡く輝く。その二つの白は、喧騒に満ちた街の中で、ひとつの静かな空間を作り出している。
雑踏を行き交う人々は、誰もが忙しそうで、足早に通り過ぎていく。色とりどりのコートやマフラーが混ざり合い、車の音や話し声が響く中、白いジャンパーと犬の白が、不思議と目を引く。その白は純粋で、何かを主張することもなく、ただそこにある。人の流れの中で浮かび上がるその姿は、まるで冬の空に舞い降りた雪片のようだ。
白い犬は、その場でじっと主人を見上げている。リードの先で結ばれた小さな絆が、雑踏の中でも確かに存在している。その視線には焦りもなく、騒がしさに動じることもない。ただひたすらに、そこにいるということ自体が、どこか特別な意味を持つように感じられる。雑踏の中で失われることのない、静かな信頼が漂っている。
一瞬の静寂が訪れる。人々が一斉に信号の変わる音に動き出し、通りが少しだけ空く。その隙間で白いジャンパーの人物は犬に優しく声をかけ、歩き始める。二つの白い姿が連れ立って進むその様子は、冬の街の中で、小さな希望や安心感を象徴しているようだ。
雑踏や騒音、流れる冬の風の中で、その白はひとときの静寂を提供する存在だった。白いジャンパーと白い犬。それらは、喧騒に埋もれることのない純粋な光のように、その場を照らしていたのだろう。
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