静かな冬の日、雪がしんしんと降り続ける。街の喧騒が雪に吸い込まれたように音を失い、ただ白い景色だけが広がる中、人々がどこからともなく集まってくる。約束された時間や場所があるわけではない。ただ、降り続ける雪が何かを呼び寄せるように、それぞれが自然と同じ場所に足を運ぶ。
そこには特別な理由も言葉も要らない。見知らぬ顔が互いに視線を交わし、軽く頷きあうだけで、なぜか一体感が生まれる。雪は平等に降り注ぎ、誰の肩にも、誰の傘にも等しくその白さを積もらせる。その中で、人々はただそこにいること、それ自体に意味を見出しているかのようだ。
雪が作る静寂は、過去や未来を一時的に消し去り、今だけを強調する。約束がなくとも集まったその瞬間、時間や場所に縛られた関係性を超えた繋がりが生まれる。言葉にするにはあまりにも儚く、説明するにはあまりにも不確かなその感覚。それでも、雪が降り続ける限り、その空間には温かい何かが満ちている。
やがて雪が少しずつ弱まり、また誰ともなくその場を去っていく。それはまるで、ふと夢から覚めるような瞬間だ。一人一人の足跡が再びバラバラに散っていくが、その場所に一度共有された静けさや温もりは、雪の中にそっと埋もれていく。それぞれの記憶の中で、そのひとときが穏やかに生き続けるだろう。
降る雪が繋いだ、偶然のようでいて必然の集まり。それは約束の無い自由な出会いでありながら、どこか深く心に残る出来事だった。白い雪がまた静かに降り積もる中、その瞬間だけの絆が雪原に溶け込んでいく。
コメント