鏡の中に映るものは、ただの像ではない。それは昨日の私と今日の私、過ぎ去った時間とこれからの時間、その狭間に揺れる曖昧な存在のかたち。何も変わらぬように見えて、ほんのわずかに異なる表情がそこにある。光の加減か、心の影か、その違いを見極める術はなく、ただ静かに鏡の向こうを見つめる。
去年と今年の境目は、どこにあるのだろう。時計の針が零時を刻んだ瞬間なのか、それとも心の奥で何かが切り替わる瞬間なのか。鏡の中の私は、昨日の延長にありながら、確かに今日を生きている。日々を重ねながら、それでも新しい年を迎えたことを知覚するのは、私の中に変化を望む心があるからかもしれない。
窓の外では、街がゆっくりと目を覚ましていく。昨日と変わらぬ道、変わらぬ空の色。それでも、歩く人の足取りには、どこか新しい年を意識する静けさと、ほんの少しの期待が滲んでいる。鏡に映る景色もまた、何気ない日常の続きでありながら、確かに「今日」という時間のなかに存在している。
見えるものすべてが、私の内側を映す鏡なのかもしれない。去年と今年、その境界に揺れる心の輪郭をそっと指でなぞる。変わるものと変わらぬもの、そのどちらも大切にしながら、私は静かに新しい年の空気を吸い込んだ。
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