筆先が紙の上を滑る。寒中見舞いの文をしたためながら、「蛇」という字を書いたとき、その形の不思議さにふと目を留める。くねり、うねる線。その筆跡は、まるで本物の蛇が静かに身をくねらせているようにも見えた。
寒の入りを迎え、空気は一層冷え込み、地面は凍りつく。蛇たちはとうに地の奥深くに潜み、春の訪れをじっと待っている。けれど、その名を記せば、文字のなかにその姿は甦る。寒さに縮こまる身とは裏腹に、筆の上の蛇は自由にうねり、今にも紙の上を抜け出していきそうな気さえする。
冬の間、蛇は姿を消すが、それは決して死ではなく、来るべき春への準備なのだ。雪解けとともに、彼らはまた地上に現れ、草むらを這い、陽射しを浴びるだろう。その姿はまるで、筆で書かれた蛇の字が、紙の上から躍り出るかのように。
寒の入りとともに、風はさらに鋭さを増す。しかし、隠れたものたちは確かに息づいている。蛇の字を見つめながら、その静かな冬越しに、春への予感を重ねてみる。
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