武将祀る神社の鳥居日脚伸ぶ

散文
スポンサーリンク

武将を祀る神社の鳥居が、冬の澄んだ空気の中に静かに佇んでいる。かつて戦を駆けた者の名を宿すその地は、今や静謐に包まれ、ただ風の音と遠くの鳥の声が響くだけだ。長い年月を経ても変わることのない石の鳥居、その足元に落ちる影が、いつの間にか長く伸びていることに気づく。

冬の日は短く、夕暮れは早かった。けれど、今日の光は心なしか遠くまで届いている。季節が少しずつ歩を進め、かすかな春の兆しを運んでいるのだろうか。冷たい風が頬をかすめながらも、陽射しのなかにわずかな温もりが滲む。鳥居の向こう、社殿へ続く参道にも、淡い光が差し込んでいた。

武将の名が刻まれた石碑を前に立つ。かつて剣を握り、国を動かした者たちも、この長い時の流れのなかでは静かな存在となる。だが、歴史はこうして残り、春の訪れとともに光を浴び続ける。その営みは、名を刻まれた者たちの眠るこの場所を、なおさら生きたものとして感じさせた。

鳥居の影が伸びるほどに、季節は確かに移ろっている。戦のない時代に生きる私たちが、この光のもとで何を選び、どう歩んでいくのか。その問いを残すかのように、神社の境内には、穏やかな春の気配がそっと漂い始めていた。

コメント

タイトルとURLをコピーしました