袋ください袋要ります冬浅し

散文
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レジの前に立つ。手に収まらない品物をカゴから出し、ふと「袋ください」と口にする自分の声が、冬の浅い空気にどこかそぐわないような気がした。近年のルールや習慣の変化の中で、この言葉を口にする頻度が減ったのに、今日はなぜかためらいなく発した。必要だから。それだけなのに、少しだけ後ろめたい気持ちが胸の奥で疼く。

袋を手渡される。紙かビニールか、どちらでもいいはずなのに、その軽さや手触りが微妙に記憶に残る。かつては当たり前だったものが、いまや選択を伴う行為となった。冬の始まりの曖昧な寒さとともに、心に浮かぶのは、手軽さと環境、便利さと意識の間で揺れる葛藤だ。必要か、不必要か。そんな二択に自分の暮らしが収まらないことに、微かな息苦しさを感じる。

それでも、袋はやはりありがたい。袋に品物を収める瞬間、寒い風の中で手に抱えたくない重みや不便さが解消される。その小さな安心感は、いまだ薄い冬の輪郭を描き出すように心に響く。買い物袋がいくつもの手の温もりや労力を通り抜けてきたことを思うと、その存在が単なる物以上のものに感じられる。

「袋要りますか」と問われるたび、その言葉が持つ重みと軽さの両方を噛みしめる。冬が浅い今の時期、その袋はただの入れ物ではなく、自分と季節とのささやかな接点でもあるのだ。要るか要らないかではなく、その瞬間に生まれる感覚が冬の日々の一部となり、後になって記憶の中でそっと手触りを残すのだろう。

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