手を繋ぐ子のやや遅し秋の暮

散文
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夕闇がそっと降りてくる秋の帰り道、小さな手が親の手にしっかりと絡む。道端の草花が淡い影を伸ばし、空は茜から次第に藍色へと移りゆく。その空気の中で、手を繋ぐ親子の歩みはどこかゆっくりと、時を惜しむかのように遅れがちだ。子どもの足取りは少しばかりたどたどしく、親の手に引かれながらも、何かを見つけては立ち止まる。足元に転がる石、風に揺れる落ち葉、時おり聞こえる小さな虫の声——そのすべてが彼にとっては発見であり、秋の記憶のひとつひとつだ。

親は微笑んで、歩調を合わせながら、その小さな発見の数々を見守る。心のどこかで、自分もかつてこうして親に手を引かれ、同じ道を同じようにゆっくり歩いたことを思い出す。そうした遠い日々の記憶が、秋の匂いとともに蘇るようで、やや冷えた夕風にその思いを託して、静かに一歩ずつ進む。

やがて家々の灯りがぽつぽつと灯り始めると、暗闇が次第に濃くなる。それでも親は、子の遅い歩みを急かすことなく、ただその小さな手の温もりを確かめるように握り返す。家路が近づくたび、子どもが語る断片的な言葉や質問が一層愛おしく思えて、今この瞬間をずっと大切にしていたいという気持ちが静かに心に根を下ろす。

ふたりの影が長く伸び、秋の暮れがすっかり夜の帳に包まれるころ、その歩みはようやく家の門へとたどり着く。時間がゆるやかに流れる秋の夕暮れに、親子の小さな歩みと、手と手の温もりが、穏やかなぬくもりとともに残り続ける。

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