人類の毒克服すとろろ汁

散文
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とろろ汁が湯気を立てて静かに器の中に佇んでいる。その白く粘り気のある液体は、どこか原始的な力を感じさせる。それは自然からの恵みであり、長い年月をかけて人類とともに生き続けてきたもの。とろろをすくい上げ、口に運ぶと、素朴な味わいが体に染み込んでくる。まるで大地そのものが、人間に再び清らかさを取り戻させようとしているかのように。

人類は、長い歴史の中で数々の毒に出会い、それを克服してきた。自然界の毒、心の毒、文明がもたらした毒――それらは全て、時に人を蝕み、時に強くする。だが、現代においては、その毒が内側に深く入り込み、もはや何が毒で何が薬か見分けることさえ難しくなっている。そうした中で、とろろ汁は、静かに一筋の希望を示すようだ。無垢な白さの中に潜む力は、単なる栄養を超えた何かを暗示している。

とろろの滑らかな舌触りが、喉を通り抜け、体の奥へと広がっていく感覚は、まるで人類の内にこびりついた毒を洗い流しているかのようだ。その粘り気が、心の中に積もった疲れや不安を包み込み、ゆっくりと解き放っていく。その瞬間、人類が自然から遠ざかっていた年月の重みがふと軽くなり、少しだけ過去の自分たちと再び繋がれる気がする。

とろろ汁を一口、また一口と味わう中で、今の自分たちが持つ毒をどう扱うべきかが見えてくる。克服という言葉は強いが、それはすぐに完全に消し去ることではなく、共存しながらも浄化していく長い過程を意味しているのかもしれない。人類はその毒を否定し続けるのではなく、とろろ汁のようにそれを内包し、少しずつ解きほぐしていくことで、新たな未来を紡いでいくのだろう。

秋の風が窓を揺らし、深い呼吸ができるこの瞬間、とろろ汁の温もりが、心と体にじんわりと広がっていく。毒を抱えながらも、それを癒し、克服するための静かな力が、この一椀の中に秘められているように感じられる。

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