急に雨が降って来たので

clouds during sunset 創作
Photo by Soubhagya Maharana on Pexels.com
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急に雨が降って来た。

家を出た時は曇りだったのだが、それからすぐに降り出して来た。

傘を持たずに家を出てしまったので濡れたまま進むしかない。

幸い、今日は平日なので人通りも少ないし、雨音が大きいから多少大きな声を出しても気づかれないはずだ。

そう思いながら歩いていると……

ドンッ!

いきなり横合いから誰かにぶつかられた。

よろけそうになったが何とか踏み留まる。

しかし、その拍子に手に持っていたカバンを落としてしまう。

慌てて拾おうとした時、相手も同じ様にしゃがみ込み、俺よりも先にカバンを拾い上げた。

そしてそのまま立ち去ろうとする。

俺は反射的に腕を伸ばしてその男の腕を掴んだ。

だが、掴んだと思った瞬間、男の姿は消えていた。

まるで最初からそこにいなかったかの様に……

(なっ!?)

思わず息を飲む。

今目の前で起こった事が信じられなかった。

いや、信じたくはなかったのだ。

(そんなバカな事があるはずがない。幻覚でも見ていたのか?)

そう思うが、現実に男が消えた事は紛れもない事実だ。

自分の目を疑うなんて事はない。

取り敢えず落としたカバンを拾おうとして気づく。

いつの間にか雨脚が強くなっていた。

このままここにいたら間違いなくずぶ濡れになるだろう。

仕方ないので一度家に戻ろうと踵を返す。

強くなった雨は肩を濡らし、そろそろ肌着も濡れて来ているようだった。

(帰ったら一度着替えようかな。)

そう思い、家に向かった。

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