さんきゅー俳句

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散文

正月の三本足と二本足

朝の空気が澄みわたり、新しい年の光が街を静かに照らしている。まだ人影の少ない道を歩くと、鳥たちが地面をついばみ、忙しなく動いているのが目に入る。その足跡は、三本の指を広げた形で土や雪の上に残され、まるで見えない書を記すかのようだ。やがて彼ら...
散文

それぞれに役割を持ち今朝の春

朝の光がやわらかく差し込み、静かな空気のなかに春の気配が滲む。冬の名残がそこかしこにありながら、ふとした瞬間に感じる温もりが、新しい季節の訪れを告げている。庭の木々はまだ眠るように佇み、鳥たちは控えめにさえずる。そんななかで、人もまた、それ...
散文

初景色始点終点見えぬ川

新しい年の朝、遠くまで続く川を眺める。水面には冬の陽が淡く反射し、静かに流れていく。その川の始まりはどこなのか、終わりはどこなのか、見渡しても分からない。ただ、今この瞬間も、絶え間なく水は流れ続けている。人生もまた、この川のようなものなのだ...
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散文

我以外の家族見送る旅始

朝の冷たい空気の中、家族を見送る。玄関の扉が開き、次々と外へ出ていく背中を見送りながら、私はただ静かにその光景を眺めていた。足音が遠ざかるたびに、家の中の空気が少しずつ変わっていく。つい先ほどまで聞こえていた何気ない会話も、今はもうない。た...
散文

初夢の扉に取手無かりけり

夢の中に現れた扉は、確かにそこにあった。けれど、その扉には取手がなかった。木目の美しい滑らかな表面、僅かに光を反射する静かな佇まい。しかし、それを押し開く術はどこにも見当たらなかった。私はただ、扉の前に立ち尽くし、その先に広がるはずの世界を...
散文

見えるもの鏡に映り去年今年

鏡の中に映るものは、ただの像ではない。それは昨日の私と今日の私、過ぎ去った時間とこれからの時間、その狭間に揺れる曖昧な存在のかたち。何も変わらぬように見えて、ほんのわずかに異なる表情がそこにある。光の加減か、心の影か、その違いを見極める術は...
散文

窓今日も光を通し年新た

朝の光が静かに部屋の中へと滑り込んでくる。柔らかなカーテンを透かし、壁や床に淡い影を落としながら、新しい年の気配を運んでいる。昨日と変わらぬ窓辺に立ち、ふと指先で硝子をなぞると、ひんやりとした感触が肌に沁みた。冬の冷たさとともに、清冽な空気...
散文

クリスマス幸せに裏切られ続け

クリスマスが近づくと、街は光に包まれ、赤や緑の華やかな色彩で埋め尽くされる。商店のショーウィンドウには微笑むサンタクロース、恋人たちの手を繋ぐ姿があふれ、どこを見ても「幸せ」を謳う光景ばかりだ。けれども、その光景がまるで違う世界の出来事のよ...
散文

楽器屋の扉の軽きクリスマス

冬の冷たい風が街角を抜け、どこからかクリスマスソングが微かに流れてくる。楽器屋の扉は、古びた木製のもので、小さなベルが取り付けられている。誰かがその扉を開けるたび、ベルが軽やかに音を立てる。その音色は、どこか控えめでありながらも、クリスマス...
散文

雑踏や白きジャンパー白き犬

雑踏の中に、白いジャンパーを着た人が立ち止まる。その白は、冬の曇天の下でひときわ目立ち、周囲の騒がしさの中に静けさを漂わせている。足元には一匹の白い犬がいる。その毛並みは柔らかく、冷たい風に揺れるたびに、光を吸い込むように淡く輝く。その二つ...
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