雪よ降る場所を探して降りにけり

散文
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空を見上げると、静かに雪が舞っている。風に流されながら、ふわり、ふわりと揺れ、どこへ落ちるべきかを探しているかのようだ。屋根の上、道端の隅、木の枝の先、人の肩。どこに降るかは風次第、けれど、どの一片も迷いながらも必ずどこかに落ちていく。

雪は、ただ無作為に降るのではないのかもしれない。運ばれながら、ふさわしい場所を見つけ、そっと降り積もる。まだ誰の足跡もついていない地面を選ぶこともあれば、溶けてしまうと知りながら、人の手のひらに落ちることもある。それはまるで、誰もが自分の居場所を探しながら生きているのと似ているように思えた。

この世界には、行き場のないものは何ひとつないのかもしれない。どんな雪片も、最後には何かの上に落ち着くように、人もまた、迷いながらもどこかへとたどり着く。そう考えると、舞い降りる雪の姿が、少しだけ優しく見えてくる。

ひとひらの雪が、そっと手の甲に落ちた。次の瞬間、それは静かに溶けて消える。しかし、その一瞬の存在を確かに感じながら、私はまた、空を見上げる。

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