さんきゅー俳句

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散文

痛みやがて冬の灯へ変はりゆく

痛みは静かに胸の奥に広がる。身体の一部を押さえたくなるような鋭さであったり、心をじわじわと締めつけるような鈍さであったり。その正体は様々だが、冬の冷たい空気に触れるたびに、ふとその感覚が強まるような気がする。寒さが鋭く、傷ついた心や身体の奥...
散文

北風や赤子泣きたい程に泣く

北風が強く吹きつけ、冬の冷気が肌を刺す。荒々しい風の音が建物の隙間を通り抜け、どこか哀れにも聞こえるその響きが街を覆う。寒さは容赦なく、息を吸えば肺にまで冷たさが染み込むようだ。そんな厳しい季節の中、赤子の泣き声が聞こえてくる。その声は、北...
散文

大根を食べし体に注射打つ

冬の台所、切り分けられた大根が、冷たい空気にさらされて白い湯気を立てている。鍋の中で柔らかく煮込まれたその姿は、凍える季節に小さな安らぎを与えてくれる存在だ。口に運べば、そのほのかな甘みと、身体に染み渡るような温かさが広がる。それは、まるで...
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散文

白きジャンパー正しき者は下を向く

白きジャンパーを身にまとったその人は、まるで周囲の世界から一歩引いて静かに佇むかのようだ。鮮やかな白が、どこか清潔で無垢な印象を与えるが、その姿勢はどこか控えめであり、余計な華やかさを放とうとはしない。彼の目は、常に下を向き、まるでその姿勢...
散文

寒鴉道間違えて戻らない

寒い風が吹きすさぶ道を、一羽の鴉がひとり飛んでいる。目を凝らして見れば、その羽ばたきは少し乱れているようにも見える。冬の空に浮かぶその黒い影は、まるで孤独そのものを象徴しているかのようだ。寒鴉の姿は、ただ空を漂い、ただ風に乗っているだけで、...
散文

歳暮送る時に度々待ち時間

歳暮の贈り物を包みながら、私はふと、時間の流れの不確かさに思いを馳せる。送るべき相手に届けるその一箱は、ただの品物ではない。年の瀬の、少しだけ手間をかけて選んだ品々が、感謝の気持ちを込めた言葉と共に送られる。その準備が整い、手を伸ばした瞬間...
散文

不発弾の見つかりし街冬の雲

冬の雲が重く垂れ込め、街を包み込むように広がる。空は低く、灰色の層が無情に押し寄せ、光を奪っていく。その冷たさと共に、街の隅々でひとつの出来事が静かに、しかし確実に影を落とす。不発弾が見つかったという知らせが、ひっそりと街中に広がっていく。...
散文

大雪や白き車の白きドア

大雪がしんしんと降り積もる中、世界は白に包まれていく。空の色も、地面の色も、すべてがその一色に染まり、まるで時間が一度に静止したかのような、何とも言えぬ静けさが広がる。雪の結晶が、ひとつひとつ、柔らかく舞い降りては、すべてを優しく覆い隠して...
散文

昨日を忘れ明日忘れかまど猫

冬の朝、薄明かりの中で静けさが漂う。囲炉裏の火は、もう少しで消えそうなほどに弱まり、その傍らで猫が丸くなっている。まるで何もかもを忘れたかのように、穏やかな表情で。ただその温もりを感じ、今この瞬間に身を委ねている。猫の背中が軽く震え、その静...
散文

なごやかや妻と子といてクリスマス

静かな冬の夜、家の中には温かな光が灯り、外の冷気を忘れさせてくれるような穏やかな空気が流れている。クリスマスの飾りがひっそりと輝き、リビングには心地よい静けさが広がっている。妻と子とともに過ごすそのひとときは、日々の忙しさを忘れさせ、何気な...
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