初春や赤いファーストシューズ買う

散文
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店先に並ぶ小さな靴の数々。その中で、ひときわ目を引いたのは赤いファーストシューズだった。まだ誰の足にも馴染んでいないその靴は、春の訪れを待つように、柔らかな光を受けて佇んでいる。

初めて履く靴。初めて歩く道。その小さな一歩が、これからどれほどの景色を見つめることになるのだろう。まだ言葉にならない未来が、そっと詰まっているようで、思わずその靴を手に取る。赤という色の鮮やかさが、春のやわらかな陽射しと響き合うように思えた。

この靴を履いた足が、最初に踏むのはどんな地面だろう。家の中の温かな床か、それとも、公園の土の上か。ぎこちなく揺れる歩みも、やがて確かな力を持ち、自分の行きたい場所へと進んでいく。その日々の始まりを、この赤い靴がそっと支えるのだ。

買い物袋に包まれた靴を抱えながら、外へ出ると、春の気配がそっと風に混じっていた。まだ肌寒い季節の端々に、新しい何かが芽吹き始めている。その兆しとともに、小さな靴の未来も、今まさに始まろうとしていた。

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